No.003 平野公亮さん

東京⇔白浜の2拠点生活で自分のやりたいことに向かって進む

取材日:2022年8月28日

平野公亮さん

 平野さんは東京生まれの東京育ち。昨年、白浜町の方との結婚を機に和歌山に移住されました。現在、仕事の拠点である東京と奥さんの実家がある白浜での2拠点生活をしています。都会に出た経験が無い私は、まずその経歴に圧倒され「こんな田舎者がちゃんと話をできるのだろうか」と緊張していました。インタビュー前のLINEのやりとりで自己紹介を受けたとき、メッセージからにじみ出る賢さ、そして理路整然とした進め方に完全に尻込みしてしまった私。そんな不安を抱えながら、いよいよインタビュー当日を迎えたのです。

 当日は夕方に田辺市のBig・Uで待ち合わせ。平野さんは前の予定が押して、少し遅れるとのこと。「きっとスタイリッシュに登場してくるのだろう」とドキドキして待っていたのですが、平野さんはその緊張を裏切るかのようにTシャツにハーフパンツというカジュアルな出で立ちで、日焼けした様子で現れました。

ーー今日はお時間頂きありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

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平野:遅れてすみません。白良浜で妻の知り合いの海の家で手伝いをしてまして、それで時間が押してしまいました。

ーーそうなんですね。それにしても、この時期すごいお客さんだったんじゃないですか?

平野:もう、すごいお客さんで。私は注文を聞いて厨房にメニューを伝えたり、料理を渡したりしていたのですが、「カレーお客さんに渡して!」「わかりましたー!」といった感じで、もう言われたままにやるって感じでした。もうその部分の記憶がごそっとないくらいです(笑)

ーーえー。それはお疲れのところありがとうございます。時間も遅いですし、さっそくお話に入りたいのですが、平野さんはいつから白浜に移住されたのでしょうか。

平野:昨年9月に妻と結婚し、妻の実家がある白浜に今年1月移住しました。妻はこちらで働いていて、彼女が東京に出張に来た際に出会いました。出会ったときはまさか結婚するなんて思ってもいませんでしたね。移住のきっかけは結婚する2年前に銀行員からコンサル会社に転職したのですが、本社は東京で、コロナ禍でリモートワークが進むようになり、居住地を自由に選べるということになったんです。自由に選べるといっても東京育ちの私は特に地方に縁もゆかりもないわけで。それで結婚を機に妻の実家に住まわせてもらい、白浜を拠点に仕事をすることにしたんです。東京のオフィスには必要な時に出社するくらいで、ほとんどは電話やネットを使ってパソコンで仕事をしています。白浜と東京は飛行機ですぐ行けますし、実は妻の実家は空港から車で2分とアクセスがいいんですよ。

ーーなるほど、こういう時代ですものね。コンサルのお仕事に転職されたとのことですが、お仕事ではどのようなことをされているんでしょうか?

平野:今は人事コンサルの部門にいます。例えばクライアントの会社が新しい事業に取り組みたいとき、その新しい事業にマッチした人材を定義し社員の配置・育成や採用計画などの策定・実行をお手伝いします。給与などの人事制度を作るお手伝いもしますし、企業の人事に関する業務を支援しています。

ーー以前は銀行員をされていたとのことですが、どうしてコンサルに転職しようと?

平野:きっかけは、35歳くらいで香港に転勤したことでした。香港って物価がめちゃくちゃ高い。もやしって日本では10円くらいじゃないですか。香港では200円くらいするんですよ。それに冬場なんかは大陸側の暖房で燃やしている化石燃料のチリが飛んできて空気も綺麗じゃない。それで日本の環境の良さに気づいたんです。「水と空気が日本の最大の資源なんだ」と。その資源を最大限活用するには農業だと思い、そこから地方に関心を持つようになったんです。銀行員を続けても地方創生に取り組める機会も少ないだろうし、他にも関心があるスポーツや教育関連のビジネスに触れる機会も求めて転職を決めました。

ーーそして白浜の方と結婚されて、和歌山に移住してきた。なんかいろんなタイミングがピタッと合って人生が好転しているように見えますね。実際に東京と白浜の2拠点生活をしてみていかがですか?

平野:東京でずっと仕事を続けることもできたとは思いますが、白浜に拠点を置きながらリモートワークしている今の方がフィット感を持って仕事に取り組めているなと思っています。白浜に移住して半年ですが、とても魅力ある地域だなと思っていますし、移住して失敗したなとか、そういう感覚はありません。外からきた私にとっては仕事の合間に数分で海にアクセスできるといった今の生活が非日常に感じることも地元の人にとっては日常生活だと言われるギャップも面白いですし、地元の人にとっては当たり前すぎる白浜の良さに、外から来た私だから気づくこともあると思っています。そういった感性も持ちながら、地方創生の取り組みにも関わっていきたいです。

私は今43歳ですが、20年スパンで人生の変化が起こっているなと思っていて。生まれて20歳までは親が敷いたレールで生きて、20歳から40歳まではいろんな所へいっていろんな刺激を受け学ぶ。そして40歳からは自分がやりたいことに向かって進んで行く。そんな感じがしていますね。

ーー素敵ですね。地域にも何かしたいけどどう動いて良いか分からない若者も掘ればたくさんいるはず。経験豊富な平野さんが関わってくれたら、絶対活性化すると思います。もう私がコンサルしてほしいくらい(笑)。東京での活動についてもお聞きしたいのですが、平野さんは東京で大学のアメフト部のコーチもされているんですよね?

平野:はい。私自身学生時代ずっとアメフトをやっていまして、4年前から母校の大学でコーチになり、週末に東京で教えています。月でいうと10日が東京で残りが白浜といったところでしょうか。20歳以上離れた学生と向き合うのは大変な時もありますが刺激もあってやりがいはあります。どうしたら学生が主体性を持って取り組めるか、スイッチを入れることもそうですし、ひとり一人と向き合ってこちらが学ぶ部分もあります。コーチになって4年になりますが、ちょうど成長を見届けるスパンに到達しました。コーチ初年度に入学してきた学生が今年卒業を迎えるのも感慨深いですし、学生によっては数ヶ月でぐっと大人になっていくんです。ああ、顔つきが変わって頼もしくなってるな~って思いますね。

ーーコーチを通した学生との関わりの中で、どんな大人でありたいかなど意識していますか?

平野:「あの人と一緒の時間を過ごして良かった」と思われるコーチになりたいですね。コーチは無償で行っていますが、やっていなかったらまた違う人生だったんじゃないかと思います。学生に伝えることは自分自身の経験から来るものも多いです。香港にいた頃、上司から「お前は人に期待しすぎなんだ」と言われたことがありまして。そのことが印象に残っていて、学生には「自分が自分に期待し、その期待に応えるための時間を過ごすように」と伝えています。ある日学生との意見のぶつかり合いがあって、学生から「僕はアメフトを心から楽しめていません」とラインが来ました。「えっ、辞めてしまうのか?」と思い急いでメッセージを開きよく読んだら「なんとなく練習している点を解消すれば上手くなると平野さんに言われて、練習を変えて化けたい」と書いていたんです。その子が自己分析をして自分の今の課題や改善点を挙げていて、最後には「ボコボコにたたいて欲しいです!!」と。それは嬉しかったです。彼がどのように化けるか楽しみですよ。

ーー熱い!そういう大人が近くにいてくれるのは、学生さんにとってとても幸せなことだと思います。でも話を聞いていて、仕事とコーチの切り替えが結構大変そうだなと思ったのですが……。

平野:そんなことはないかなと思います。仕事は基本リモートで、自分で時間を調整しながら仕事できるんです。日中打ち合わせがないときはジムに行ったり、学生と話したりしていますよ。

ーーそうなんですか。では、実際の1日のスケジュールを教えていただけますか?

平野:

   8:00 起床
   9:00 仕事(ネットを使って打ち合わせなど)
 12:00 昼食
 13:00 仕事(仕事の合間にジムに行ったり学生と話す)
 19:00 夜ご飯(奥様と一緒に食事しながら一日の出来事を共有する)
 21:00 昼間していなかった分の仕事
 22:00 自由時間、就寝


といった感じです。たまに夜遅くから仕事をすることがあり、妻から「えっ、こんな時間から仕事?」と言われることがありますが、優しく受け入れてくれています。

ーー自由に時間を決められるのがいいですね。でも気が休まる時間がなさそうです。

平野:いえいえ、実はお風呂に入っているときに頭の整理ができたりしますよ。仕事でのミーティングでこういうことを提案しようとか、アメフトの練習でこういうメニューをやってみようとか。仕事とアメフトのことが相互につながって、いろんな考えが浮かんだりして、忘れないようLINEでメモっています。

ーーおおー。たしかに、人と向き合ったり、チームで取り組んだりする点はお仕事もアメフトも通ずるものがあるなと思います。最後に、これからの人生でこういうことをやっていきたいなどの展望があれば教えてください。

平野:縁があって白浜に来たので、白浜で縁を持った方たちが「これ手伝って」と言われて自分の経験やできることを通して地域がプラスに働くようなことに取り組めたらいいと思っています。地域ビジネスの活性化だったり、白良浜で行われているビーチラグビーにも関心があります。こうして白浜での自分の「居場所」をこれから確立していきたいです。もちろん、アメフトとも両立で!

ーーありがとうございました!

PROFILE

平野 公亮

白浜町に住む奥様との結婚を機に、昨年から白浜と東京の2拠点で生活。コンサルティング会社で人事コンサルに携わる傍ら、4年前から東京にある母校の大学のアメフト部コーチとして学生を指導。週の半分ずつを白浜と東京で過ごしている。

出身地:東京都

インタビューを終えて……

 冒頭にも記しましたが、東京生まれ東京育ちの方にインタビューを行うということで、自分の人生の軸とは180度違う方なんだと勝手に想像し、インタビュー前は正直不安を感じていました。ですが、お話をしていくうちに地方創生への思いや学生への思いが熱く、情熱とユーモアあふれる方なんだと思い、とても親近感を感じました。「東京」というだけで構えてしまうのはよくありませんね。反省しました。こうして都会から和歌山に住むようになった人が地元民と交流を重ねることでお互いが刺激を受け、町や人が元気になれればなと思います。インタビューにご協力していただき、ありがとうございました。

NPO好きの会社員